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BLOG/ブログ「ろ過記」

におい・かおり環境学会誌寄稿 2021.03.08ブログ

におい・かおり環境学会誌1月号に、社員が脱臭装置について寄稿しました。以下、長文ですがご紹介します。   においと私「脱臭試験」   趣味の俳句ににおいの要素を取り入れるようになってから、日常の中にあるにおいを見つけることが楽しくなりました。においは、私たちに過去の記憶やそのときの感情を思い出させてくれることがあります。感情を直接的に表現しないことが多い俳句において、においの要素は有用であり、奥深さをもたらしてくれるものと、私は思っています。私にとって「におい」は趣味になりつつあります。私がにおいの魅力に気づいたのは、7年前のある案件がきっかけでした。   2013年の冬、私は某食品会社様の工場の屋上で脱臭試験を行っていました。工場から排出される食品由来の臭気を脱臭したいというお客様からのご依頼があり、最適な脱臭方法を検討していました。700m3/minほどの排気ガスの一部を試験機に導入し、データを採取していました。   試験機は、メインとなる脱臭器の他に、ファンやポンプ、また、それらを接続するためのホースや配管などで構成されます。試験機の物量は1100mm×1100mmのパレットおよそ2枚分です。ステンレスでできたそれらの機材を屋上まで運ぶ手段が人力しかないと知ったときは絶望でした。筋肉痛の体で試験初日を迎えたことを思い出します。   最初に原臭を嗅いだときには、食欲をそそるようないいにおいだと感じました。それまで、ごみ処理場や下水処理場などの案件を担当することが多かった私にとって、そこは心地のいい現場だと思いました。しかし、しばらくそのにおいの環境下にいると、次第に鼻が疲れてくるような感覚におそわれました。においのもつおもしろい性質を体感しました。   対象の臭気は、スクラバーでの処理が有効であることがわかりました。苛性ソーダと次亜塩素酸ソーダを用いて脱臭する方法です。私はその脱臭効果に驚きました。原臭は、私がそれまで担当してきた案件の中でも、トップクラスに強いにおいだったためです。脱臭効果については、すぐにでも担当者様からOKをいただけるだろうと思っていました。しかし、担当者様の評価は、「原臭は感じられないが、次亜塩素酸ソーダ由来の塩素臭が気になる」というものでした。   担当者様のおっしゃるとおり、次亜塩素酸ソーダを使用するスクラバーでは、多少の塩素臭は残ってしまいます。前述のとおり、ごみ処理場や下水処理場の案件を多く担当していた私は、その塩素臭に違和感はありませんでした。塩素臭については、「そういうものですよ」と担当者様にお伝えしました。しかし、「食品を扱う工場から薬品のにおいがしていたらどう思うか」と問われ、私はすぐに納得しました。一般の見学者も多く来られる工場です。これではダメだと再試験にかかりました。すべての案件、すべてのお客様に対して、すべて同じような運転調整をしていてはいけないと学びました。   次亜塩素酸ソーダの使用量を下げると塩素臭は弱まりましたが、減らしすぎると原臭を感じるようになりました。その微調整を繰り返し、私たちはようやく最適条件を見出しました。これには担当者様もご納得され、分析業者様へにおいの測定を依頼することになりました。結果、無事にお客様の要求レベルをクリアすることができました。   私たちが試験機の解体準備をしていると、工場の方々が数名現場に来られました。これから導入される脱臭設備でどれほどの効果が期待できるのかと、興味をもたれたようです。「全然においがわからない」「少し原臭が感じられるがよくとれている」「やっぱり塩素臭は残るね」。かなり調整を重ねたのですが、皆さまおっしゃられることはバラバラで、担当者様と苦笑いしたのを覚えています。   それから約半年の設計期間、工事期間を経て、ついに、700m3/minの実機試運転の日を迎えました。自信を持って運転したその脱臭設備は、試験どおりの性能を発揮し、このプロジェクトは完結しました。   この一件以降、私は、以前よりも脱臭案件に注力するようになりました。においの基礎知識を学び、においのおもしろさに気づき、そして、趣味の俳句へとつながります。   日常の中にある様々なにおいに気づくためにも、一日も早く、マスクを必要としない生活に戻ることを願うばかりです。   設計部 S.K
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